小児科
小児科

小児科は子どもの多様な疾患に対応する診療科です。小児の病気は症状の訴えがなかったり、わかりにくかったりという特徴があります。また、発症や進行が急であることが多く、病気の種類も多数存在します。子ども特有の感染症もあり、感染症にかかりながら免疫を得ていくために、一生で最も感染症にかかることが多い時期といえます。
お子さまが熱を出すと心配になりますが、幼い子どもは感染する様々なウイルスが初めてであり、感染の都度、その防御反応としてよく熱を出します。また、体力もなく、疲れたり、興奮したりしただけでも熱が出ることがあります。37.5℃以上を発熱と考え、それ以下であればほとんどの場合、心配はいりません。発熱は病気のサインとして重要なうえ、体の防御反応ですから、むやみに薬で熱を下げる必要はありません。解熱剤などは医療機関の診察で病気の状態が把握されてから、医師の指示のもとで安全に使用してください。
突発性発疹は、2歳までにほとんどの人がかかる頻度の高い感染症です。発症すると、突然38℃以上の高熱が現れますが、食欲がない、機嫌が悪い、ぐったりしている、といった全身症状が目立たないケースが多いことも特徴です。通常、発熱は3〜4日で自然に治まりますが、解熱後に全身(顔や腕、脚など)に発疹が多数みられます。発疹は2~10㎜程度の小さなプツプツとした紅斑で、3~4日ほどで跡を残さず消失します。かゆみや痛みなどは伴いません。
水痘・帯状疱疹ウイルスが咳やくしゃみで飛び散り、それを吸い込んだり(飛沫感染)、水疱が破れて出てきた液に触ったりする(接触感染)ことで起こります。37~38度程度の発熱とともに、赤い小さな発疹が現れます。発疹は、水が入ってふくらんだ水疱になり、かゆみが強くなります。水疱は2~3日でしぼみ、黒褐色のかさぶたになり、1週間程度で治ります。水ぼうそうは治ってもウイルスは長く体の神経節細胞内に留まっているため、何年か後に帯状疱疹(帯状ヘルペス)という病気を発症することもあります。
夏かぜのウイルスで起こる病気で、手のひら、足のうら、口の中に水疱(水ぶくれ)ができるのが特徴です。生後6カ月から4~5歳の乳幼児に多く、飛沫感染や便から排泄されたウイルスが手に付着し経口感染することもあります。
口の中の発疹は盛りあがったり、水をもったりするブツブツで、破れて潰瘍になると、刺激のある物を食べるとしみて痛がるようになります。口内の症状に少し遅れて、手のひら、足のうらなどに生米くらいの水疱性の発疹ができます。まれに髄膜炎を合併することがありますので、高熱や頭痛、ひきつけ、嘔吐などの症状が伴う場合は、すぐに受診しましょう。
溶血性連鎖球菌(溶連菌)による感染症で、かぜと同じような症状を起こします。急性咽頭炎を起こした場合、発熱してのどが痛くなり、のどや口の中が真っ赤になります。舌にいちごのようなブツブツができることもあります。食べ物を飲み込んだだけでも痛みます。治療によって2~3日程度でのどの痛みや発熱、発疹などの症状は治まります。
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)は、ムンプスウイルスによる感染症で、主に小児に多く見られます。飛沫感染や接触感染で広がり、学校や保育園など集団生活を通じて流行しやすいのが特徴です。潜伏期間は約2〜3週間で、発症すると耳の下から顎にかけての耳下腺が腫れて痛みを伴いますが、通常は1週間程度で回復します。合併症には無菌性髄膜炎、精巣炎、卵巣炎、膵炎、難聴などがあり、特に思春期以降の男性では精巣炎が約20〜30%に発生するといわれ、将来の不妊につながることもあるため注意が必要です。難聴は一度発症すると回復が難しく、後遺症となる場合があるため、合併症の兆候がある際には速やかに医療機関を受診することが大切です。
おたふくかぜの唯一の有効な予防法はワクチン接種です。2回接種することで十分な免疫が得られ、重症化や合併症を防ぐ効果が期待できます。
アデノウイルスは、乳幼児から学童期の子どもたちによく見られる感染症のひとつで、季節を問わず一年中発症しますが、特に夏場に流行する傾向があります。急な高熱や咽頭痛、結膜炎(目の充血や目やに)を引き起こすウイルスで、感染部位によって「咽頭結膜熱(プール熱)」「咽頭炎」「肺炎」など、さまざまな症状を引き起こすことが知られています。
「プール熱」という別名は、結膜炎を併発したアデノウイルス感染が、かつてプールでの集団感染で多く見られたことに由来します。症状はつらいものの、ほとんどの場合は自然に回復しますが、感染力が非常に強いため、家庭や保育施設、学校での感染予防が大切です。
アデノウイルス感染症に対する特効薬はなく、治療は対症療法が中心です。熱が続いている間は無理をせず、十分な休息をとることが回復につながります。抗菌薬(抗生物質)はウイルスには効果がないため、使用されません。
ヘルパンギーナは、主に夏に流行するエンテロウイルス属のウイルス、特にコクサッキーウイルスA群の感染症で、特に乳幼児を中心に多くみられる疾患です。突然の高熱と、のどの奥にできる小さな水疱(すいほう)や潰瘍(かいよう)による痛みを主な症状とします。手足口病と混同されやすい病気ですが、手足に発疹は見られず、口腔内のみの症状が特徴です。また、水疱や潰瘍の数は少ないものの、のどの奥に集中してできるため、飲食時に強い痛みが生じます。乳幼児では水分が取れなくなり、脱水症状につながることがあるため注意が必要です。多くの場合は自然に回復しますが、水分が全く取れない、ぐったりしている、呼吸が苦しそうといった場合は早めに受診が必要です。まれに髄膜炎や心筋炎などの合併症を引き起こすこともあるため注意が必要です。
RSウイルスは、乳幼児から高齢者まで幅広い世代にみられる呼吸器感染症です。特に生後6ヶ月以内の感染は重症化しやすく、発熱、鼻水、咳などかぜに似た症状の他に進行すると「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった喘鳴(ぜんめい)や呼吸困難、哺乳量の低下や無呼吸発作を起こすこともあります。重症の場合は酸素投与や入院管理が必要になることもあります。日本では毎年秋から冬にかけて流行します。RSウイルスは非常に感染力が強く、ほとんどの子どもが2歳までに一度は感染するとされています。再感染も起こりやすく、大人が感染した場合は軽いかぜ症状で済むことも多いですが、乳幼児や基礎疾患を持つ方では注意が必要です。
川崎病は、乳幼児を中心に発症する原因不明の全身性血管炎です。日本で初めて報告され、現在も小児の後天性心疾患の主な原因とされています。特に4歳以下の子どもに発症しやすく、男児の方がやや多い傾向があります。年間を通じて発症しますが、冬から春にかけてやや多いといわれています。早期に治療を行わないと、心臓の冠動脈に合併症を残す可能性があるため、早期診断と適切な対応が非常に重要です。
乳児湿疹は生後2週~2カ月ころによく見られる湿疹で、顔、首、頭など皮脂の分泌が多い部位に現れやすい症状です。にきびのような湿疹やカサカサした赤みのある湿疹、黄色いかさぶたやフケなど、さまざまなタイプがみられます。原因としては皮脂の分泌の関与や、毛穴に皮脂が詰まることなどが挙げられます。ひっかき傷から細菌感染などを起こすこともありますので、症状が長引く場合は、皮膚科で適切な治療を受けることをお勧めします。
尿や便などが刺激となり、おむつが接触する部位に赤いブツブツやただれが生じます。おむつをこまめに替えて、清潔と乾燥を保つことが予防とケアになります。おむつをはずした後、患部を少し乾かしてから装着すると良いでしょう。清潔は大切ですが、洗いすぎには注意が必要です。石鹸を使用するのは1日1回とし、すすぎ残しのないように十分に流しましょう。早く治すためには塗り薬が有効で、亜鉛華軟膏やワセリン軟膏などで皮膚を保護します。
アトピー性皮膚炎は、目や耳の周り、首、ひじやひざのくぼみなどに、かゆみを伴う湿疹やカサカサが繰り返し起こる病気です。乳幼児期は、顔、頭、首などに出やすく、ひどくなると全身に広がります。この時期は一時的な乳児湿疹かどうかを、経過をみながら判断する必要があります。3歳以上になると、手足の関節部分やでん部など、掻きやすい部位に出やすくなる傾向があります。
悪化する要因には、黄色ブドウ球菌や、ダニ・ハウスダスト・カビなどの環境アレルゲン、汗、ペットの毛やフケ、食事バランスなどいろいろあります。
アトピー性皮膚炎は根気よく正しいスキンケアと治療を行うことで、症状をコントロールすることができますので、皮膚のバリア機能を少しでも正常に保つよう日頃のケアを継続して行うことが大切です。
喘息は空気の通り道である気道が様々な刺激(かぜ、ハウスダスト、花粉、運動など)によって炎症を起こし、敏感になることで狭くなってしまう病気です。このため、呼吸が苦しくなったり、咳が出たりといった症状が繰り返し起こります。
症状がなくても気道の炎症は続いていることがあるため、症状がなくなったからと自己判断で治療を中断せず、定期的な受診と日々のケアが大切です。
また、スギ花粉症やダニアレルギーが喘息の要因となっている場合には、舌下免疫療法が有効な場合があります。
アレルゲンを低濃度から体内に取り込み、徐々に濃度を上げていき、慣れさせることで体質改善を目指す治療法で、3~5年継続する必要があります。
治療方法は、薬を舌の下に置き、薬ごとに定められた時間を経過した後に飲み込みます。
スギ花粉症では、治療を開始してはじめて迎えるスギ花粉飛散のシーズンから、ダニアレルギー性鼻炎では、治療を開始して数カ月後から効果が期待できます。年単位の治療継続で最大の効果が得られると考えられており、スギ花粉症、ダニアレルギー性鼻炎は、治療の対象年齢はいずれも5歳以上です。
※ただし、すべての患者さんに同様の効果が期待できるわけではないことをご了承ください。
夜尿とは、夜間睡眠中に無意識のうちに尿が漏れてしまうことです。睡眠中に膀胱がいっぱいになっても、尿意で目を覚ますことができないという覚醒障害が基礎にあり、加えて膀胱の就寝中の働きや大きさが未熟なこと、尿産生が多すぎる(夜間多尿)といった要因が重なることで発生します。排尿記録によってそれぞれのお子さまに合った治療を提案します。
まずは、生活習慣の改善を図り、必要に応じて内服治療を行います。
便秘とは、排便の回数が少ない、便が硬く出にくい、排便時に痛みがあるなど、排便に関連するトラブルが慢性的に続いている状態をいいます。小児の便秘は年齢や生活習慣によって原因が異なり、早期の対処が重要です。便秘は放置すると悪化し、痔や遺糞症(便漏れ)などにつながることもあります。まずは生活習慣の見直しから始め、改善が見られない場合は医師の診察を受けることが大切です。
便秘治療では、「すぐに治す」よりも「少しずつ整えていく」ことが大切です。まずは腸にたまった便を取り除き、1~2日に1回の自然な排便リズムを身につけていくことを目標とします。
子どもの転倒などによる頭部外傷は、日常生活の中で遭遇することが多いけがといえます。多くの場合は、様子をみたり、ぶつけた部位を少し冷やすといった対応ですみますが、意識を失ったり、けいれんしたりするなど、注意が必要な場合もあります。このような症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診するようにしてください。
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